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伝説が遂に蘇る!
1983年から84年にかけて3枚発表された『ゴジラ伝説』『ゴジラ伝説II』『ゴジラ伝説III』のオリジナルLPをアナログマスターテープより最新デジタル・リマスタリング、さらに新録音の『ゴジラ伝説IV』を加えた全4枚を紙ジャケットに封入、資料満載のブックレット「ゴジラ伝説全史」と一緒にクリアケースにパッケージ。

ブリッジ通販限定特典
『ゴジラ伝説IV』ポストカード
(特典はなくなり次第終了いたします)

レーベル:BRIDGE INC. 品番:BRIDGE175/178 フォーマット:4CD BOX(紙ジャケット4枚組+56Pブックレット)
発売日:2014年10月3日 税抜価格:10,000円(税込10,800円)

Disc1 ゴジラ伝説

「ゴジラのテーマ」は『ゴジラ』(1954版)から選曲。ドラムはジューシーフルーツの高木利夫、ギターは鈴木賢二。特撮映画研究家の竹内博はこの録音を聴いたときに「あんまり軽すぎてズッコケた」と痛烈に批判、以後の録音テイクにも常に最も辛口な意見を述べた。一方竹内と共同で多くの特撮映画音楽のレコードを構成していた西脇博光は「だけど他の曲の中には面白いものもあったよ」と絶妙なタイミングでフォロー。2人のアメとムチ攻撃は、その後の『ゴジラ伝説』製作の大きな推進力となった。 「巨大なる魔神」は『キングコング対ゴジラ』から選曲。合唱はヒカシューの巻上公一、井上誠、三琳正道、ゲルニカの戸川純、東京ブラボーの高木完と坂本ミツワ。ヒカシューファンクラブ、ディレクターの岩瀬政雄、アマチュア連合特撮大会で共に働いた開田裕治も参加。開田はこの後、レコードジャケット用にゴジラのイラストを描いてくれることになった。

track list

ゴジラのテーマ/巨大なる魔神/キングコング対ゴジラ/コング輸送作戦/聖なる泉〜モスラの旅立ち/ゴジラ進撃す/黒部谷のテーマ/キングギドラ出現!/地球怪獣連合軍/怪獣総進撃マーチ/メカゴジラIIのテーマ/怪獣大戦争マーチ/エンディング

credit

Arrange & Synthesizer programming:井上誠
Drums & Percussion:高木利夫**
E.Bass:沖山優司**
E.Guiter:鈴木賢二
E.Harp:上野耕路*
Chorus:坂本ミツワ、高木完、岩本エスオ、開田裕治、菊地優子、平林亜紀、佐々木克美、三琳正道、巻上公一、戸川純*、岩瀬政雄
*=by the courtesy of ALFA RECORDS,Inc.
**=by the courtesy of Nippon columbia co.,Ltd.
Director:藤田純二、岩瀬政雄
Engineer:柄沢喜一
Assistant Engineer:須賀孝男
Illustration:開田裕治
Design:宇根秀訓

Disc2 ゴジラ伝説 II

1983年の7月頃、井上は岩瀬から『ゴジラ伝説』の続編を作らないかと提案された。最初のレコードでゴジラシリーズの主要曲をほぼ網羅してしまった井上が「ゴジラ以外の特撮シリーズから選曲してもいいですか?」と尋ね、岩瀬は「いいよ。何なら東宝以外の映画会社の作品でも。」と答えてくれた。井上はすぐにレコード3枚分ほどの収録候補曲を選んだが、その中には大映の「大魔神」や東映動画の「わんぱく王子の大蛇退治」からも数曲ずつ選ばれていた。結果的にレコード1枚分の時間内に収まるよう絞った時には、幾つものテーマ曲が削られ、あるいは1曲の中に合成されていた。 「成層圏外からの来訪者」は『宇宙大怪獣ドゴラ』のメインテーマ。立花ハジメはゴドレイ&クレームの発明したギター・アタッチメントのギズモと同種のイーボウを使用し、不定形なドゴラのイメージを際立たせた。立花も大の伊福部ファンで、この頃発売されたロック系音楽雑誌で伊福部音楽の魅力を熱く語っていた。 「神聖ムウ帝国亡国歌」は『海底軍艦』から選曲。戸川純と巻上公一の歌唱はそれぞれ2回ずつ重ねて録音。太田蛍一の歌詞のイメージは、太田が上野耕路や戸川純と共に結成したゲルニカや、小栗虫太郎の「人外魔境」を題材にした彼のソロアルバムに共通する独特の世界感を持っていた。

track list

成層圏外からの来訪者/わんぱく王子の大蛇退治/極点の鋼鉄猿人/Uボート/メーサー光線車マーチ/夜の巨人/神聖ムウ帝国亡国歌/轟天建武隊出撃せり!/天空の大科学戦/地球防衛軍/ラティテュード・ゼロ/異形の荒神/大地の鎮魂歌/ボヤージ・トゥ・ドリーム・クェスト

credit

Arrange & Synthesizer programming : 井上誠 Drums & Percussion : 友田真吾/高木利夫**/泉水敏郎
E.Bass : 坂出雅海/渡辺 等/沖山優司**
E.Guiter : 立花ハジメ*/海琳正道
Piano : 上野耕路*
Sax : ジミー中山/矢口博康
Chorus : 巻上公一/戸川 純*/高畑和美/ぼたん/すみれ/アリサ/開田裕治/高貴準三/松山 仁/藤掛聖子/常岡千恵子/真穂光子/山崎里恵/平林亜紀/佐々木克美/川井章江/菊地優子/小熊智恵/鎌田千夏/吉田雅弘/矢沢啓至/村松孝昭/上田英生/真穂恭仁子/薊 智子/森沢美穂/山王和子/本郷 保/野田茂則/桃ノ木のきを/白浜ゆかり/今井康了/中出知光/中村 哲
*=by the courtesy of ALFA RECORDS,Inc.
**=by the courtesy of Nippon columbia co.,Ltd.
Special thanks:小林哲子/中島紳介/金田益実/竹内 博/西脇博光/開田裕治/聖 咲奇/高鳥 真/永島 治/館岡利昌/山下 康/岩本晴二/井上しのぶ/江口勝敏/篠崎恵子/東宝効果集団/ネオフェラス/特撮ファンクラブG/ヒカシューファンクラブ
Director 藤田純二/岩瀬政雄
Engineer 柄沢喜一/鈴木孝一
Assistant Engineer 須賀孝男
Illustration 開田裕治
Design 坂口和澄

Disc3 ゴジラ伝説III

3枚目のアルバム制作の話は春頃に決定したはずだが、相次ぐコンサートやイベントへの参加などで作業は一向に進まなかった。特に苦労したのが選曲で、古関裕而の「モスラの歌」や佐藤勝の「メカゴジラのテーマ」など、伊福部昭以外の特撮映画音楽でファンに人気の高い作品を入れようと決めた時も、その作風の違いをどのようにシンセサイザーで表現したらいいのか暫く悩んだ。 「モスラの歌」の歌唱はリリーズ。総勢70名の合唱団は皆一般のゴジラファンがこの合唱のためにキングレコードに集まってくれた。 「俺ら宇宙のパイロット」は『妖星ゴラス』の挿入歌。ここでは漫画家の破李拳竜、和田慎二、三浦純が多くの特撮ファンと一緒に威勢良く歌い、最後を巻上公一がまとめ上げた。 『ゴジラ伝説III』は当初の予定より1カ月遅れ、新作『ゴジラ』公開直前の12月5日にようやく発売された。

track list

・大怪獣モスラより:ネルソンのプロローグ(台詞)/インファント・アイランド/モスラの歌
・ゴジラ対決シリーズより:メカゴジラの逆襲縲怎Sジラ対ガイガン
・ゴジラの逆襲:南海の大決闘/ゴジラ対メカゴジラ/
・妖星ゴラスより:イントロダクション/ゴラス大接近/地球移動計画/俺ら宇宙のパイロット
・怪獣大戦争より:我々は未来に向かって脱出する!(台詞)/怪獣大戦争メインタイトル/
・ゴジラ対ガイガンより:子供ランドの崩壊/
・地球最大の決戦〜キングコング対ゴジラ〜モスラ対ゴジラより:東北本線北上中の列車に警告!(台詞)/ゴジラ進撃す/
・モスラ対ゴジラより:マハラモスラ/
・ゴジラ1954より:平和の祈り/
・ゴジラ1984より:ゴジラ復活

credit

Arrange & Synthesizer programming:井上誠
Drums & Percussion:高木利夫*/友田真吾/谷口 勝
Bass:沖山優司*/坂出雅海
Sitar & Tabla:若林忠宏
Vacal:リリーズ(燕奈緒美/燕真由美)/高畑和美/巻上公一
Chorus:高橋達志/開田裕治/木村光男/細川英一/大澤ひでこ/間宮尚彦/後藤修一/三浦 純/松田七重/渡辺昇平/中山純子/中山 太/服部真理子/笹川美由紀/薊 智子/宮永正則/冨谷 洋/佐藤和哉/本池 禎/平井幸夫/福田延子/野田茂則/山崎里恵/松井なつき/熊谷尚枝/中山 蛙/泊 宏明/佐川 顕/阿部純江/井田芳子/関島岳郎/清水秀晶/小林吉江/長谷川結子/白藤靖子/久世 幸/村松はるみ/金刺ゆり/和田慎二/森沢美穂/上田英生/山崎尚美/伊藤克典/荒井洋一/にしはたゆき/野々村文宏/棚谷祐一/北田かおる/小熊純子/藤森康江/柳沢美穂/稲垣友子/白山隆彦/田森康介/山王和子/松木直美/勝又 淳/破李拳竜/石見淳一/太田螢一/菊地優子/渋川昌彦/橋本公紀/近藤邦弘/才谷 遼/福田 誠/鈴木倫太郎/プリンス・ハイネ/西久保秀文
*=by the courtesy of Nippon columbia co.,Ltd.
Director:藤田純二/岩瀬政雄
Engineer:鈴木孝一/辻 裕之
Assistant Engineer:須賀孝男
Illustration:開田裕治
Editor:野々村文宏

Special thanks:竹内 博/西脇博光/開田裕治/聖 咲奇/中島紳介/金田益実/高鳥 真/宮内正博/阿部洋三/井上しのぶ/海琳正道/一瀬隆重/河崎 実/スピノザ・ミュージック/G.F.K/中村 忍(英文)

Disc4 ゴジラ伝説IV

2014年6月、『ゴジラ伝説』『ゴジラ伝説II』『ゴジラ伝説III』のリイシューが決定。新たに『ゴジラ伝説IV』を作成し、全4枚組とすることになった。 4枚目のディスク『ゴジラ伝説IV』は、『豪快なゴジラ伝説』で録音した音源をベースに、全てのハイリーズドラムと不気味社の合唱を新録音した。曲順も入れ替え、平成ゴジラシリーズからの歌曲を新たに録音、収録した。 「巨大なる魔神」の2番の歌詞は、1984年東横ホールのライブのために太田が作詩した日本語詩を採用した。合唱は不気味社。「神聖ムウ帝国亡国歌」は、八尋健生、八尋史のツインボーカルと不気味社の合唱。 「地球防衛軍」は、伊福部音楽が表現する猛烈な攻撃性に迫りたくて再挑戦したのだが、アレンジしていくうちに美しい舞踊曲のような一面も見えてきた。30年ぶりにこの曲を再びレコーディングした友田は、ハイリーズドラムの音色で新たな表現を加えてくれた。 「Kimta an KAMUI」は『ゴジラVSメカゴジラ』から選曲。八尋史のボーカルを中心に、80人の子どもたちと16人の伊福部ファンによる合唱をコラージュした。

track list

・わんぱく王子の大蛇退治より:プロローグ/メインテーマ/母のない子の子守唄/アメノウズメの踊り/開く岩戸
・ゴジラ(1954)より:栄光丸夜曲
・キングコング対ゴジラより:ゴジラの恐怖/巨大なる魔神
・海底軍艦より:神聖ムウ帝国亡国歌
・モスラ対ゴジラより:聖なる泉/マハラモスラ/モスラ対ゴジラ
・ゴジラ(1954)より:帝都の惨状
・地球防衛軍、空の大怪獣ラドンより:地球防衛軍
・ゴジラVSメカゴジラより:Kimuta an KAMUI
・ゴジラ(1954)より:ゴジラのテーマ

credit

Arrange & Synthesizer programming:井上誠
Highleads Drums:友田真吾
Female Vocal:八尋史
Chorus:今井淳/金築真/北村哲朗/下村岳夫/関義徳/高見和樹/田中一彦/八尋健生 (以上8名不気味社)
Chorus(Kimuta an KAMUI):芦沢光宏/大橋鉄雄/笠原克明/神田瑞穂/久保田太一郎/西塔紅美/櫻井省吾/鈴木正幸/關翔太/高橋洋/徳島勝幸/豊田朋久/長岡友吾/西川伸司/二宮孝/吉田正和
Director:井上誠
Recorded : 井上誠/ 八尋健生
Mixed:近藤祥昭(Gok Sound)/ 井上誠
Mastered : 森崎雅人(Saidera Mastering)
Illustration:開田裕治

Special thanks:岩瀬政雄/ 開田裕治/松山仁/ 八尋健生/ 不気味社

「ゴジラ伝説」発売記念特別インタビュー

Vol.1
上野 耕路
上野耕路(うえの・こうじ)千葉県出身。1970年代よりパンク・ニュー・ウエイヴ・シーンにおいて『8/1/2』そして、『ハルメンズ』で活動。1980年には戸川純、太田蛍一と共に『ゲルニカ』を結成し『改造への躍動』で82年にYENレーベルからデビューした。1989年には映画『ウンタマ・ギルー』の音楽で毎日映画コンクール音楽賞を受賞。2000年より日本大学芸術学部映画学科において「映画音楽」の講義を開始。2013年、『のぼうの城』で日本アカデミー優秀音楽賞受賞、AFA2013音楽賞ノミネート。 (上野耕路Official Siteより抜粋)
『ゴジラ伝説』に関わった人たちは、プログレとかオールド・ロックも聴いてはいたんだろうけれども、やっぱり(世代的に)パンク、ニューウェイブなんですよ。伊福部さんの音楽の感じって、プログレよりも、圧倒的にパンク、ニューウェイブの方が合っているんですよ。片山(杜秀)君も文藝別冊に「正当で異端」とかって書いていたけど。

ニューウェイブの人たちは、伊福部さんが青春を過ごした1930年代の文化に対する憧れもあって、そんなところもマッチしたんじゃないかな。伊福部さんは、その時代にまだ20代前半で一番若い世代だったから、若くして1930年代の文化に触れていた伊福部さんの何かが、(あの頃の僕らに)シンクロしたんじゃないかな。

僕らの一つ前の世代には、フュージョンだとか、よく訓練されたミュージシャンがいっぱいいたけれど、僕らがちょっとそうじゃないことをやろうとしてた勢いって、伊福部さんが中央の音楽アカデミズムに北海道の辺境から殴り込み、じゃないけれど、挑んでいった感じと、ちょっと似ていたかも知れないですね。

戦後の前衛音楽って、表現力の節約なんて言いながら、本当はそもそも表現力がないんじゃないかっていうものもあって、そんなのが主流の時代に、伊福部さんの音楽にはむき出しのリズムやむき出しのエネルギーがあって、あれはなんなんだって異端視されましたよね。だけど僕らはビート・ジェネレーション以降の世代だから、もうどうしたって伊福部さんの音楽に惹かれるんですよ。

(2014年7月16日、中野坂上にて)

Vol.2
高木 完
高木完(たかぎ・かん) 神奈川県出身。DJ音楽プロデューサー/クリエイティブ・ディレクターK.A.N CO.LTD代表取締役。70年代ロンドンパンクに衝撃を受け、バンド「東京ブラボー」結成、デビュー。80年代、DJ開始。雑誌『ポパイ』『ホットドッグ・プレス』等ライター開始。藤原ヒロシと『タイニー・パンクス』結成。雑誌『宝島』での連載『LAST ORGY』が話題となり『要チェック!』という流行語を生み出す。ニューヨークで衝撃を受けたヒップホップを、いとうせいこう達と日本に伝導。日本初クラブ・ミュージック・レーベル『MAJOR FORCE』を、藤原ヒロシ、屋敷豪太、工藤昌之、中西俊夫と設立。スチャダラパー、ECD等を世に送り出す。90年代ソロアーティストとして活躍。21世紀、A BATHING APEレーベル『APESOUNDS』、『UNDERCOVER』のサウンド、香港『SILLYTHING』ディレクション等。(BLOGより抜粋)
小学生の頃、学校で『つるのおんがえし』の映画を見に行くよういわれて、行ってみたら併映が『サンダ対ガイラ』だったんですよ。うわっ! これは怖すぎる!って、もうトラウマのようになっちゃって。それが伊福部さん初体験。

日劇ゴジラ大会(1979年)の特別上映で『怪獣王ゴジラ』をやったとき、巻上さんと3人で観にいったよね。渋谷の「ナイロン100%」で待ち合わせて。あの頃、怪獣映画を観に行くと、誰かしらナイロンの常連に出くわした。怪獣映画とパンクって合ってたんですよ。(東京ロッカーズの)ミラーズのヒゴさんがゴジラレコードっていうインディーズレーベルを立ち上げたり、あのころは(パンク、ニューウェーブの)ライブのチラシに怪獣のイラストを入れるのも流行ってたよね。

「キングコング対ゴジラ」の合唱曲の原始的なノリって、ボアダムスとかにも近いような。彼らも(伊福部さんを)聴いてたんじゃないのかな。伊福部さんがアイヌの即興音楽に影響されてる、って話なんか聞くと、ラップのルーツのラストポエツとかも近いのかなって思えてくる。ドラムと歌だけ、みたいな。

できあがった『ゴジラ伝説』を聴いて、トシ(高木利夫)のドラムに凄い衝撃を受けたんですよ。プログレでもなくて、新しいロック、みたいな。元々ハードロックが好きだったんだけど、あの頃のニューウェーブとハードロックって違和感があって、だけど『ゴジラ伝説』の中ではその両方が巧く合わさっていて、凄いなって。やっぱ、ニューウェーブと伊福部さんが合体するとそういうものになるのかなって。

(2014年7月2日、代官山にて)

Vol.3
太田 蛍一
太田蛍一(おおた・けいいち) 1981年、戸川純と上野耕路と共にバンド「ゲルニカ」を結成。デビューアルバム「改造への躍動」を発売。歌詞と美術(ライブ衣装を含む)を担当する。 1983年、上野耕路、細野晴臣、鈴木慶一、巻上公一等が参加したソロアルバム「太田螢一の人外大魔境」を発売。 1988年、ゲルニカ2枚目のアルバム「新世紀への運河」を発売。1989年、ゲルニカ3枚目のアルバム「電離層からの眼差し」を発売。 これらの音楽活動と並行して、1986年、作品集「AMNESIA」、1987年、絵本「働く僕ら」、1988年、映像作品「たわわTV」、1995年、フランスでセリグラフィー集「LEGARGARISME」「THE BLOB」などを発表。2010年にはデビュー30周年を迎えた。
『ゴジラ』の原作者の香山滋は、小栗虫太郎の魔境小説のエッセンスを戦後に継承したようなところもあるよね。もっと遡れば『海底軍艦』の原作者の押川春浪なんかは、明治時代にもう冒険SF小節のジャンルを開拓している。そのころのSFの世界って、もっと泥臭いイメージだったと思うよ。軍艦も木で作られているような感じかな。

僕はもともと子供の頃からそういった古い冒険小説みたいな世界観が好きだったんだけど、1970年代の終り頃にアートの世界で幾何学的な、ハイテックなものが流行ったでしょ。音楽だとちょうどニューウェーブの頃。そのアールデコ的な所は僕も好きだったんだけど、80年代に入るとさすがに飽きて、改めて有機天然的な、ウネウネした植物的な、あるいは昆虫的なものに立ち返ろうと…。それらに新たな楽しみを見つけて、それらをパノラミックに展開して一枚のアルバムに集約しようって思った時に、思いついたのが小栗虫太郎の「人外魔境」だったんですよ。

そこで83年に『人外大魔境』ってアルバムを作ったんだけど、そのときも、その前に演っていたゲルニカの時も全部、詩が先にできてた。だから先に曲があって、それに後から作詩したっていうのは「神聖ムウ帝国亡国歌」が始めてだなあ。あの曲は変拍子だったけど、言葉はハマりやすかったよ。海底下っていうイメージも好きだったし(笑)。自分でも気に入った作品でした。純ちゃんも、その後もライブで歌ってくれてるんじゃないかな。
Vol.4
巻上 公一
巻上公一(まきがみ・こういち) 超歌唱家。熱海市生まれ。1978年にヒカシューを結成。特異な世界を表現し続けている希有なグループのヴォーカリスト、リーダーとして精力的にライブを行っている。演奏は、口琴、テルミンなどの特殊なものから、コルネットや尺八など複数の楽器をこなす。歌唱の可能性の拡張をめざすヴォイスパフォーマーとして国際的に高い評価を得ている。 また、トゥバ共和国の伝統的な喉歌ホーメイの研究や招聘公演、声の実験的フェスティバルやワークショップの開催、「JAZZ ART せんがわ」のプロデュースなど、活動は幅広い。 ニューヨークからトゥバ共和国まで、世界を舞台に独自のスタイルで活動を続けている。 なお、井上誠はヒカシューのオリジナルメンバーでもあり、中学校時代からの付き合い。ヒカシュー「チャクラ開き」にはチャラン・ポ・ランタンの「モスラの歌」が収録されている。
http://www.makigami.com/
36年前のヒカシュー・デビューコンサートで、もう「モスラの歌」を演ったよね。それは井上君がメロトロンに怪獣の声をいっぱい入れてたからじゃないの。ゴジラの声とかがメロトロンから出てくると、じゃ「モスラの歌」でも歌おうかってなった。それが始まり。そこから井上君が『ゴジラ伝説』を作ることになるまでは、そんなに経ってないよ。ヒカシューを始めた時点で構想的なものはあったんだよね。

ヒカシューを立ち上げたときから、あまり相手にされていないようなものをピックアップしようって気持ちはあった。ロックに限らず映画音楽でも歌謡曲でも、自分たちの聴いてきたものをそのまま作品に反映させるようなことをしていたんじゃないのかな。だからあえてクラフトワークに歌謡曲の要素を反映してみたり。

伊福部さんの、土着的なものが全面に出ている音楽って、あの頃の雰囲気とつながっていたと思うね。エスノ、民族音楽への興味が若い人たちの中で生まれ、それらを掘り起こしてワールド・ミュージックになっていく、そういった流れに一致していたと思うよ。ヒカシューの曲でも「プヨプヨ」にシタールとタブラが入ってたり「炎天下」に口琴、それから「匂い」にアンコロンとかも入っていたでしょ。

創作においては、必ず事象の影響を受けるものだから。たとえそれが批評的な態度であっても。だから同時代に生きてるってことは非常に重要になってくると思うね。僕らの時代だと、フォークソングとかニューミュージックとかがすごく流行ったけれど、僕はそうじゃないものを模索していたから。だから伊福部さんの眼差し、地球全体を見るような大きな視点を持っている、ってところが共感できるよね。

(2014年9月20日 湯河原にて)

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