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長谷川健一「星霜」(cn0015)

販売価格 1,500円(税込1,650円)
型番 cn0015

レーベル:compare notes 
品番:cn-0015
フォーマット:CD
2007.11.22発売

[track list]
1. やまいとオレンジ
2. いつかすべてを
3. 空の色
4. 星霜
5. 鳥のように
6. 無明の空
7. 未来(仮)
8. hanabi


[作品紹介]
久保田麻琴から近藤智洋(ex. ピールアウト)まで、優れた歌い手を脱帽させた
魔都・京都が産んだ最後の歌、奇跡の歌声、長谷川健一
船戸博史(ふちがみとふなと)のプロデュースでアルバム2枚同時にリリース!



 もちろん、京都に住む音楽好きならば、誰もが「ハセケンは凄い!」と口を揃えて言うのだろう。しかし、ほとんど京都でしか歌うことのなかった彼の歌を、多くの人が耳にするのはとても難しい。しかし、それは、彼、ハセケンにとって、決して不幸なことでも何でもない。歌う場所があり、そして聴く人がいるのならば、歌い手はどこでも
歌えるということを、彼は知っているから。
 3年ほど前、“京都にむっちゃええ歌い手がいる”と耳にした。もちろん、そんな話は腐るほど聞くけれど、なかなか人を誉めることのない男・船戸博史(ふちがみとふなと)の言葉ならば、別の話。興味をそそられ、ちょうどアリゾナの極ワル親父ハウ・ゲルブの来日公演を京都の拾得で行なうことになったため、噂のハセケンに共演を依頼、快く承諾をもらった。
 そして、生で聴いた彼の声は……それまで聴いたどんな歌とも別のモノだった。こんな歌がこの世に存在することを、恥ずかしながら私は知らなかった。
 驚いたのは私だけでなく、初めて彼を見たハウや、たまたま見に来ていたハウの友人である作家ミッチ・カリン(テリー・ギリアム監督の映画『ローズ・イン・タイドランド』原作者)らも同じ表情を浮かべていた。言葉の意味性や経験則とは関係なく、それは特別なものだったのだろう。また、同時に“歌うこと”の根本的な力を再確認させるようなものでもあった。彼の口から吐き出される特別な倍音は、空気を、そしてその場所自体を大きく震わせ、そして聴く者の耳の中にまっすぐに入り込んできた。そう、彼の産まれ持った宝物とは、ひとたび耳にすると、なぜか麻薬のように、もう一度聴きたくなってしまう、“聴くことの快楽”を導く声だったのだ。
 もちろん、彼の歌は優れた倍音の魅力だけではない。淡々としながらも、上品な起伏を持ったソングライティングの妙、歌詞として使われることが少ない単語を丁寧に拾い集め、脳裏に明確な風景を浮かび上がらせる言葉遣い、実はかなりのテクニックで演奏されるギター(かつて彼は2本の弦だけで歌っていたという)。それらが静かに絡み合い、感情を荒立てることなく紡がれているにもかかわらず、聴く者の心をゆっくりと締め付けていく。それが、同世代だけでなく、京都の良心・オクノ修や、たまたま本作を耳にした久保田麻琴といった数世代上のシンガー・ソングライターも絶賛する理由なのだろう。
 そんな歌声を録ることは、決して簡単なものではない。そのため、ここ数年彼をサポートし、絶大の信頼を置いているベーシスト船戸博史が初のプロデュースを担当。あえて閉塞的なスタジオを離れ、現在のホームグラウンドである京都の名所アバンギルド、車の音も聴こえるその階段部、某異能ミュージシャン宅、エンジニア宅……多くの場所を渡り歩いて、さまざまな方法で録音、ベスト・テイクを選び抜いたという。そんな紆余曲折が功を奏し、ピンと張り詰めた緊張と躍動、場所自体が震えるその空気を見事に捉えることに成功したのだ。
 しかし、それらひとつひとつの楽曲があまりに緊張感が高く、録音された90分以上の楽曲を一気に聴くのは、集中力を必要とされると考え、今回、あえてフル・アルバム2枚という形で発表されることとなった。結果、彼の実験的な部分が全面に押し出された『星霜』、そしてソングライターとしての才を十二分に堪能できる『凍る炎』という異なるキャラクターのアルバムが完成。ここには現在の長谷川健一の姿が、生々しく記録されている。
 京都のガケ書房より、これまでのCD-R4枚をコンパイルしたハセケン・ボックスも予定されているだけに、ほとんど同時に6枚リリースというお披露目だが、彼の前にこの先続く運命と比べれば、それらも些末なことなのだろう。歌が歌として当たり前に響くことの素晴らしさを思い起こさせてくれる音楽、嘘だと疑う前に、まず聴けばいい。簡単なことだ。
(小田晶房/ map)


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